Strength Design Systems Laboratory

研究Research

研究概要Outline

研究内容

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航空機や自動車、プラントなどに代表される「機械システム」の構成部材には様々な力が働き、その力に耐えられる設計でなければなりません。そのためにはまず、機械システムの構成部材にどの様な力(または、応力やひずみ)が生じているかを正確に知る必要があります。近年ではFEM(有限要素法)によるシミュレーションが広く用いられており、実際に近い応力状態の評価や開発・設計の効率化にも役立っています。しかし、材料力学による計算やFEMによるシミュレーションだけでは真に部材生じている応力を知ることはできないため、部材に生じている応力を実験により把握する必要があります。特に深刻な破壊・事故・機能不全に結び付く様な重要な部分であればあるほど実測によりその状態を確実に評価する必要があります

ところで、材料にはその製造や加工、接合などによって、残留応力と呼ばれる応力が生じ、想定通りの強度が担保されないこともあります。そのため、この「残留応力」と呼ばれる応力の評価も欠くことができません。
本研究室では機械システムの構成部材に生じる「応力の評価」に関する研究を行っており、特に非破壊での残留応力測定が可能なX線応力測定法(X線回折を用いた応力測定法)による応力評価や、その測定方法の研究を行っています。

また、強度評価には部材に生じている応力・ひずみの把握のみならず、材料の力学的特性を理解することも欠かせません。材料の力学的特性は材料の種類はもちろん、その組織(結晶粒径、結晶配向性、転位密度etc)によっても大きく変化するため、材料組織と力学的特性の関係についての研究にも取り組んでいます。材料組織と力学的特性の関係についての知見は材料の加工法の向上新たな材料開発にもつながり、ものづくりをしていくうえで重要です。

本研究室では、こららの研究を通して「安全・安心で快適な社会」を実現するための「縁の下の力持ち」として社会に貢献しています。

特徴

X線回折を用いた応力評価や材料組織の評価を行っています。また通常のラボX線源を用いた実験の他、学外の大型加速器施設でのシンクロトロン放射光(SPring-8)や中性子線(J-PARC)を用いた実験も行っています。

また、他大学や公的研究機関、企業などの共同研究も積極的に行っています。

研究テーマ例

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X線回折X-ray diffraction

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金属など結晶材料にX線を照射すると、右図のようにブラッグの回折条件を満足するような角度2θに回折X線を生じます。ブラッグの回折条件は入射X線の波長λ、原子面間隔d、回折角2θで構成されるため、特定の波長λを持つX線(例えば特性X線)を用いれば、回折角2θを測定することで、原子面間隔dを求めることができます。

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ここで、無ひずみ材料の原子面間隔d0とひずみを有する材料のdを比較することで、ひずみεをε=(d-d0)/d0として求めることができます。すなわち原子間の距離をものさし(Atomic guage)として、ひずみを測ることができます。

右の図は実際の測定装置、左下の図が測定したSi粉末からのX線回折像です。

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顕微鏡観察Microscopy

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材料のことを理解するためには顕微鏡による材料組織の観察が欠かせません。
一口に顕微鏡と言っても様々な種類の顕微鏡があり、本研究室では観察の目的に合わせた顕微鏡を用いて材料の組織観察を行っています。

写真は異なる顕微鏡でTRIP鋼の観察結果です。
左上:光学顕微鏡、右上:SEM(走査型電子顕微鏡)、右下:EBSD、左下:AFM(原子間力顕微鏡)

TRIP鋼は変態誘起塑性(TRansformation Induced Plasticity)を利用した強度-延性バランスに優れた鋼であり、近年自動車などを中心に利用されいる注目の材料です。

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ラインプロファイル解析Line Profile Analysis

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回折X線のプロファイル形状は結晶の微視構造によって変化します。
例えば、結晶中に格子欠陥の一つである転位が存在すると、転位によって生じるミクロなひずみによって回折X線のプロファイルがブロード(幅広)になります(右図)。この回折X線のブロードニングを利用して転位密度など結晶の微視構造を解析するのがラインプロファイル解析です。

転位の様な微視構造の評価にはTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた観察による評価が一般的ですが、試料作製の困難さや試料を破壊する必要があるなどの難点があります。ラインプロファイル解析では試料表面に直接X線を照射して測定するため、試料作製などの難点を解決することができます。また、ラインプロファイル解析では転位密度や結晶子サイズといった具体的な定量値が得られるという長所があります。

本研究室ではこれらの特徴を生かし、ラインプロファイル解析を用いた微視構造とマクロな力学的特性の関係について研究しています。

研究成果

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ピーニング処理Peening Process

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ショットピーニング(SP)レーザーピーニング(LP)といったピーニング技術は金属材料表面へ圧縮残留応力を導入することで,材料の機械的性質や耐腐食性などを向上することができる表面処理技術です。

SP:鋼球などを材料表面に投射することで材料表面に圧縮残留応力を導入する方法
LP:水中でレーザー光を材料表面に照射することで材料表面に圧縮残留応力を導入する方法
他にもウォータージェットピーニングや超音波衝撃処理(UIT)などのピーニング方法があります。

SPは従来から自動車や航空機の部品など産業界で広く用いられてきました。一方LPは、近年実用化され原子炉配管溶接部のSCC(応力腐食割れ)対策などとして利用されてきましたが、最近では航空機用エンジンのファンブレードなどへの応用も広がりつつあります。

本研究室では様々なピーニング処理により残留応力の導入・緩和メカニズムの検討や、それらの機械的性質への影響などについて研究しています。

研究成果

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Fe-Mn-Si系合金Fe-Mn-Si Alloy

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Fe-Mn-Si系合金では室温付近で変形を加えることにより応力誘起マルテンサイト変態が起こり、加熱により形状が回復する特徴があります。この特徴から鉄系形状記憶合金と呼ばれることもあります。この材料は上記の形状記憶特性の他に耐摩耗性、非磁性、低温靱性等の機械的特性についても優れ、近年ではパイプやレールの締結材として実用化されています。
この合金の形状回復特性は変形により生成したε-マルテンサイト相が加熱により逆変態することによって発現します。図は変形前、変形後、加熱(形状回復処理)後におけるそれぞれの放射光X線回折像を示しています。変形前の状態では、母相であるγ-オーステナイト相の回折のみが観察されますが(A)、変形に伴いマルテンサイト変態が起き、ε-マルテンサイト相の回折像が検出されます(B)。このε-マルテンサイト相は加熱により母相であるγ-オーステナイト相に逆変態し、形状が回復します(C)。
このように変形と形状回復の様子をX線回折像の変化から観察することが可能です。さらに、X線回折法を用いれば相応力や、転位密度といった材料の機械的性質と密接に関わりのあるデータを抽出することができます。 本研究室では相変態に伴う組織変化および形状記憶特性と、相応力との関係を解明する研究を行っています。

*修士2年の佐藤晃君が日本鉄鋼協会 秋季講演大会での発表において努力賞を受賞しました。→こちら

研究成果

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金属ガラスMetallic glasses

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<金属ガラスとは>
金属は結晶金属アモルファス金属の2種類に大別する事ができます。結晶金属は構成する原子が周期的に一定の規則性を持って並んだ結晶粒の集合体であり、工業製品として用いられている金属材料のほとんどを占めています。一方、アモルファス金属とは構成する原子が無秩序に並んでいる金属であり、発見されたのは1960年代と比較的新しく、微小なものや粉末のみ生成が可能でした。その後、1990年代に初めてバルク形状で生成することができるアモルファス金属、通称「金属ガラス」が発見されました。金属ガラスは結晶金属を凌駕する高強度・強靭性といった優れた機械的特性を有しており、工業分野での実用化が望まれています。

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<研究アプローチ>
金属ガラスの発見から現在に至るまでその研究は盛んに行われてきました。しかし、ほとんどが引張試験や破面観察など巨視的な研究であり、金属ガラスの優れた機械的特性の根本原因、すなわち原子レベルでの変形・破壊進展の様子は明らかになっていません。そのため、実用化には多くの課題が残っているのが現状です。そこで、私たちは変形に伴う原子の無秩序配列状態の変化を定量的に評価することで、本材料の高強度発現機構を解明します。そして、金属ガラスのさらなる実用化に役立てることを目標とし研究に取り組んでいます。具体的には組成が異なる(構造が異なる)金属ガラスを複数用意し、単軸引張負荷応力を与えながら、高エネルギー放射光を用いてX線プロファイルを測定します(右上図)。これを詳細に解析することによって、様々な空間レベルでのひずみ状態を調べています。その結果、原子レベルでの局所的ひずみ量は試料のマクロな変形量と一致しないことやその様子に構造依存性があることなど新しい知見が得られつつあります。

*修士2年の清水健太君が日本材料学会金属ガラス部門委員会 優秀研究発表賞を受賞しました。→こちら

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